人と食事をするときに、吐き気やめまいなどの症状が出る「会食恐怖症」。 この症状を抱えたまま社会人として生きていくのは、想像以上に過酷です。
私自身、一番症状がひどかった時期からはだいぶ前進したものの、現在も当事者が集まる広島のカフェでスタッフとして活動する中で、同世代の方々と「会社員時代の会食の苦労」が話題になることは少なくありません。やはり、会社員という立場は会食の試練の連続です。
この記事では、会社員として過ごす中で「どのような会食の試練が降りかかってくるのか」を8つのシチュエーションに整理し、私がそれぞれをどう乗り越えてきたのか(あるいは失敗したのか)をリアルに振り返ってみたいと思います。
会社員に降りかかる「8つの会食」
1. 新人歓迎会
入社して最初の試練です。 「初っ端から症状が出て、第一印象が最悪になったらどうしよう…」という強烈な不安が、さらに症状を加速させます。 もし普通の居酒屋であれば、まずはサラダや枝豆など喉を通りやすいものから口にして、不安のピーク(最初の数十分)をなんとか分散させるのがいいのかなと思います。
私の時は、運良く大人数の「立食形式」だったため事なきを得ました。あの時の精神状態を考えると、座敷の居酒屋だったらおそらく終わっていました。やはり立食は正義。
2. 同期とのランチ
これも序盤の難関です。同期がいる場合、高確率で「一緒にお昼食べようよ」という流れになります。 同期というフラットで絶妙な関係上、「実は人とご飯を食べるのが苦手で…」とは圧倒的に打ち明けづらいのが現実です。
私の時は、6人でのテーブル席という非常に不安な状況でしたが、当時は抗不安薬を飲むことで無理やり乗り切りました。緊張しすぎて、料理の味は全く覚えていません。
3. 研修での昼食
研修時も、一緒に受けている同僚と昼食に行く機会が必然的に生まれます。 私の時は、自然な流れで「一回り上の先輩」とランチに行くことになったため、すかさず「お蕎麦とか…どうですか!」と打診して蕎麦屋に誘導しました。 不安は強かったですが、「蕎麦なら大丈夫、食べられる…!」と自分に何度も言い聞かせて乗り切りました。一回り上の先輩が相手だったことも、逆に気を遣いすぎず食べやすかった要因かもしれません。
4. 出張先での昼食
出張がある業種の場合、その場の流れで昼食を共にすることになります。移動による体力の消耗や、慣れない環境のせいで症状が出る確率は跳ね上がります。仕事をしに来ているのに、食事という要素で謎に精神を削られるのは本当につらいですよね。
私の初めての出張では、部長と先輩2人の計4人でファミレスに行きました。最初は不安でしたが、食事が運ばれてくるまでの会話を通して不思議と緊張が和らぎ、結果的に美味しく食べられました。相手の「トーク力(しゃべりのうまさ)」に救われることもあります。
5. 忘年会・新年会
中盤にやってくる大きな試練です。「この大人数の中で発症したらどうしよう…」と恐怖を感じる方も多いはずです。 お酒の席なので、基本は「食べられる分だけ食べる」というゼロベースのメンタルで挑むのが一番です。
私の時は席移動が自由なスタイルだったので、忍者のように様々な席を飛び回り、ひたすら「食べていないこと」を誤魔化しました。無事に乗り切ったものの、家に帰ってから一人でお腹が鳴るあの悲しさは忘れられません。
6. 上司・先輩との食事
昼休みのランチ、仕事終わりの夕食、サシ飲みなど、シチュエーションは多岐にわたります。 もし相手が信頼できる人だと感じたら、勇気を出して自分が会食恐怖症であることを伝えるのが最も有効な手段です。相手が知ってくれているだけで、症状は圧倒的に出にくくなります。
とはいえ、20代だった当時の私はこの告白がどうしてもできず、結局私の症状を知っている同僚はたった1名だけでした。頭では「伝えたほうが楽になる」と分かっていても、なかなか言い出せないのがこの疾患の苦しいところです。
7. 後輩との食事
2年目以降に発生する新たな試練です。 先輩相手よりも、後輩に対して「自分は会食恐怖症だ」とは圧倒的に言いづらくなります。 飲み会では、後輩が善意でおかずを取り分けてくれますが、心の中では「私のはそんなに盛らなくていいよ〜(泣)」と叫んでいたりします。
以前、会社の後輩2人とラーメン屋に行った際、何年かぶりに症状が爆発してしまい、何も頼まずに途中で帰ってしまった苦い経験があります。これは本当につらかったです。
8. 取引先との食事
難易度MAX。絶対に断れないし、失敗も許されない上級試練です。 これはもう、腹をくくるしかありません。
【考えられる対策】
- 入店時に必ず「お手洗いの位置」を把握する(逃げ場があるという認識だけで少しマシになります)。
- 食べていないことを指摘されたら、「ちょっと緊張しちゃって」「最近少し胃腸の調子が悪くて」と言い訳を用意しておく。
- 車で行くお店なら「車酔いしちゃって」という理由も有効。
初対面の人との会食を乗り切るためのマインドセット
ここまでサラリーマンに降りかかる会食の数々を振り返りましたが、やはり最も試練となるのは「初めましての人と食事をする場合」です。
人は「この先どうなるか分からない」という状況に対して強い恐怖を感じます。そのため、あらかじめ「一番最悪の場合、どうなるか?」を具体的にイメージして、対策を持っておくことが強力な武器になります。
食事中に発症したら?「最悪の事態」への備え方
- みんなの前で嘔吐してしまったら? ⇒ ビニール袋をあらかじめポケットに忍ばせておくことで、空間を汚すという「一番最悪の事態」は避けられます。
- 急にトイレに駆け込んで注目されたら? ⇒ お店に入ったら、あらかじめ「トイレに最も近い席」を狙って座ることで、移動距離と注目を最低限に抑えられます。
- 一緒に食事をしている人に変に思われたら? ⇒ ほとんどの場合「たまたま体調が悪いのかな?」と思われるだけで済みます。仮にそれだけで変に思ったり、嫌ってくるような人がいたら、その人からは迷わず距離を置きましょう。
これらはあくまで付け焼き刃の対策かもしれません。しかし、全く手ぶらで挑むよりは遥かにマシです。何より、「最悪の状況を一度シミュレーションしておく」というプロセス自体が、お守り代わりになります。
まとめ
会社員として生きていると、避けようのない会食の試練が日々続きますが、どうか自分を責めすぎずに、できる範囲で乗り切っていってほしいと思います。私もこれからも頑張ります。
会食恐怖症の克服に向けて、私が「実際にやってよかったこと(3つのステップ)」は以下の記事にまとめています。少し心にエネルギーがあるなと感じたタイミングで、ぜひ読んでみてください。



