会食恐怖症の当事者の方とお話をしていると、必ずと言っていいほど話題に上がるのが「周りの人に自分の症状をどう伝えるか(カミングアウト)」という問題です。
会食恐怖症は、自分がそうであると相手に伝える(知ってもらう)ことで、食事中のプレッシャーが減り、劇的に症状が出にくくなるという特徴があります。 しかしその反面、「伝えること自体のハードルがとてつもなく高い」というのが現実です。
周りからは「普通に『苦手』って言ってくれればいいのに」と思われることもありますが、そもそも、そんなに簡単に人に打ち明けられるような性格であれば、この症状には悩まされていないパターンが多いです。
私自身、8年前に会食恐怖症を自覚して以来、本当にたくさんの方に自分の症状を伝えてきました。現在は広島の「食べなくてもいいカフェ」でスタッフとして活動していますが、これまでの経験や多くの当事者との交流を通して、「相手に合わせた伝え方のコツ」がある程度見えてきました。
この記事では、会食恐怖症のカミングアウトにフォーカスし、具体的な伝え方や注意点について解説します。
「会食恐怖症」という言葉をそのまま使うべきか?

まず迷うのが、相手に伝える際に「会食恐怖症」という具体的な言葉(病名)を使うかどうかです。ここは非常に難しいポイントになります。
多くの場合、会食恐怖症の人が恐れているのはその人との関係性が変化することだったりします。
病名を使わずにやんわりと伝えようとして、「人と食事をするのが苦手なんだよね」と言ってしまうことがよくありますが、これは多くの勘違いを引き起こす可能性があります。
相手に「そんなに緊張しなくていいのに(ただの極度のあがり症?)」と軽く受け取られたり、最悪の場合は「私とご飯を食べるのが嫌なのかな。じゃあもう誘うのはやめておこう」と誤解されたりしてしまいます。
本当は「あなたと楽しく食事がしたいけれど、体が反応して気持ち悪くなってしまうから難しい」という複雑な心理状態なのに、それが伝わらないのは悲しいですよね。
そのため、「会食恐怖症」という言葉を使わないのであれば、「メニュー表を見るとめまいがしてくる」「席に座っただけで吐き気がする」「目の前に料理が運ばれてくると気持ち悪くなる」といったように、具体的な『身体の症状』が出ることをしっかり伝えるのがおすすめです。
クッション言葉を使う

その伝え方をするために有効な手段として、伝える前に相手の心理的衝撃をやわらげる言葉を使うという手段があります。会食恐怖症という単語を使うにしろ使わないにしろ、クッション言葉を使うのは非常に有効です。
以下に、その一例を挙げます。
- 「あまり重く捉えないでほしいんだけど…」
カジュアルに伝えたいときの安定択です。相手の心理的な抵抗や構えを低くすることができ、結果的にその相手との食事が楽になることが多いです。 - 「これからも一緒に、安心して過ごしたいから言うんだけど…」
パートナーや親友、家族など、親密な関係性の相手に伝えるときに有効です。いざ自分で言うとなると照れくさいですが、誠実に伝えたいときはこのような言い回しがおすすめです。 - 「テレビでも紹介されたことがある症状なんだけど…」
祖父母や親世代、あるいは会社の上司など、「テレビ」や「メディア情報」に厚い信頼を置いている世代に伝えるときに理解してもらいやすいです。 - 「昔からの体質みたいな感じなんだけど…」
なにかトラウマのようなことがチラつかないため、相手に深刻に受け取られすぎないというメリットがあります。少食の人はこれで納得してもらいやすいかもしれません。
【関係性別】カミングアウトのポイントと注意点

ここからは、パートナー/友人/会社の同僚の3パターンに分けて、どのように伝えるのがいいのか、そもそも伝えるべきなのかということについて話していきます。
パートナー(恋人・配偶者)について
「パートナーだったら簡単に打ち明けられるじゃん」と思う人も中にはいるかもしれませんが、なかなかそう簡単にいかないのも事実です。少なくとも私は難しいと思っています。
パートナーの場合、会食の機会が嵐の様に降り注ぎます。しかも外食も多いです。
だから、パートナーにはどこかのタイミングで自分の症状を打ち明けざるを得ないのですが、やはり気を遣ってほしくないという気持ちもあるので、伝え方が大事になってきます。
伝え方は「これからも一緒に過ごしたいから言うんだけど」のような枕詞を使うのがおすすめです。継続的に良好な関係を築くために、ここは誠実に、大切に伝えたいところです。
友人について
友人については、その相手の性格によって食べやすさは大きく変わりますし、集合時間を調整することによって食事をある程度までは避けることができます。 だから、必ずしも打ち明ける必要はないのですが、やはり親しい人には伝えておくに越したことはありません。
必要以上に気を遣わせてしまったり、腫れ物に触るような関係性になってしまうのは最悪なので、ここもやはり伝え方が重要です。 友人であれば完璧に伝えずとも、カジュアルな感じで伝えるという手段も有効です。案外、相手はそんなに気にしていないケースも多いものです。
会社の上司・同僚について
入社直後は会食恐怖症の人にとっては試練の時期で、同期との食事、研修での食事、新人歓迎会など、会食がひたすら降りかかってきて出鼻をくじかれがちです。
だから、心が潰れてしまう前に、少なくとも自分がよく食事をする人には早いこと自分の症状を伝えておきたいところです。しかし、ここも伝え方を失敗すると、最悪なパターンとして「最近の若者は食事に来たくないのか、わがままだな」などと思われる例もあります。
相手が年配の方であれば、「テレビとかでも紹介されてる症状なんですけど」という導入を使うと理解してもらいやすかったりします。そういった、相手に合わせた伝え方を選択するのが重要になります。
会食恐怖症を打ち明けることは、恥ずかしいことではない

以上、会食恐怖症の伝え方についてお話ししてきましたが、じゃあ現実問題として「今日から周りの人に自分の症状を伝えられるか」と言うと、なかなか難しいと思います。私も何年もこのことで悩んできました。
親しい仲だからこそ言いづらかったり、言うことによって関係性が変わるのを恐れたり、障壁は山ほどあります。
その中で、私は当事者交流を始めたことによって「この症状が恥ずかしいものではない」ということを学ぶことができました。 私が初めて当事者交流をしたのは8年ほど前だったのですが、やはり相手が当事者だと自分の症状を話しやすくなりますし、「こういう感じで話すと、こういうふうに伝わるんだ」ということをそこで理解できたりします。
今は当事者が交流できる場所も増えてきているので、少し心にエネルギーがあるときに、ぜひ一度行ってみることを強くおすすめしたいです。
以上、参考になれば嬉しいです。

