「緊張する食事」というのは、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
気になる人との食事とか、身内の結婚式とか、取引先との食事とか……。そういう食事というのは得てして断ることが難しい場合が多く、その予定の日に向けてちょくちょく思い出しては「ちゃんと過ごせるかな…」と心が曇ってしまう日々を過ごしてしまいがちです。
私は8年前に会食恐怖症を自覚してから様々な取り組みを行い、今では大体の食事を乗り越えられるぐらいにはなれたので、今回は私自身の経験をもとに「断ることが難しい食事」の対策についてご紹介していきます。
一番大事なことは「ありのままの自分」でいること

- 緊張する食事の場でパニックになって変な言動をしてしまった…
- 頭が真っ白になって全く喋れなかった…
- 緊張して気持ち悪くなってしまった…
等々、食事の場での失敗というのは様々ありますが、このような事態になってしまう一番の要因は「ありのままの自分」でいられていないことにあります。
気心知れた友人と食事をしているときの自分を思い出してみてほしいのですが、かなり自然体に近い形の自分で過ごせていると思います。それが緊張する食事の場になると、「失敗してはいけない」「ちゃんとした自分でなければいけない」と自分に数々の制約をつけることによって、ありのままの自分から遠のいた「作られた自分」になろうとしてしまいます。そして、「作られた自分」というのはコントロールが難しいため、数々の失敗につながってしまうという流れになります。
だから一番大事なことは「ありのままの自分」、言い換えると「自然体の自分」にできるだけ近い形で過ごすということなのですが、ただそんなこと言われたところで「じゃあ来週に迫っている緊張する食事を乗り越えられるか」と言われたら難しいですよね。「ありのままの自分」でいるというのは案外難しく、一朝一夕ではできるようになりません(私自身も、まだ試行錯誤をしています)。
そのため、「ありのままの自分」でいることが一番大事だよということを伝えたうえで、ここからは明日からでもできる「緊張する食事前にできる準備」を6つ紹介していきます。
① 体を温める

人間の体には自律神経というものがあり、「戦闘モード」である交感神経と「休憩モード」である副交感神経が、状況に応じて無意識的に切り替わっています。
人間は「緊張する食事だ(ここで失敗してしまうと社会的に大きな損失が起こってしまうかも)」と脳が判断してしまうと交感神経が優位になり、体は「戦闘モード」に切り替わります。そうすると、「今は食べるときじゃない」と脳が体に指令を出し、胃腸のはたらきが物理的に抑制されてしいます。これは気持ちの問題で片付けられないレベルの話です。
今の我々からしたら「別に食事の場で失敗したって死ぬわけじゃなくない?」と思ってしまいますが、この危険予測は我々の祖先がマンモスを狩っていた時代から共通の機能であるため、今の時代でも脳の偏桃体という部分は「危険な場所か」の判断をかなり厳しめにして指令を出すようになっています(その時代では一回の失敗が命にかかわってしまっていたためです)。
少し話が逸れてしまいましたが、要するに交感神経よりも副交感神経のほうを強く働かせることができれば、食事がのどを通りやすくなり、安心して過ごすことができる確率が上がります。
では、副交感神経を優位にするためにどうするかというと、咄嗟にできることの例として「深呼吸をする」と「体を温める」、この2つが考えられます。
多くの場合、深呼吸のほうが推奨されやすいですが、これを正しく行って副交感神経を優位にするのは意外に難易度が高い、と私の経験上思っています。
「緊張する場面の前に深呼吸をしてみたものの、あまり緊張が静まらないし、むしろ心拍数が上がってきている気がする…」というのは、経験したことがある方も多いのではないでしょうか(もちろん、深呼吸が上手くできて落ち着けるという方は深呼吸をしていただくのもいいと思います)。
そのため、咄嗟に副交感神経を優位にするためのもう一つの手段である「体を温める」ということをおすすめします。体を温めることで血管が広がって血液の循環がよくなり、副交感神経の活動が優位になり、リラックスしやすくなるとともに胃腸の働きがよくなります。
では、どうやって体を温めればいいの?という話になりますが、様々な方法がある中で私は「温かい飲み物」を飲むことを最も推奨します。
体を内部から温めることは即効性があり、気持ちを落ち着かせるのに有効です。
さらに飲み物は五感のうち味覚・嗅覚・触覚・聴覚の4つに影響を与えます。このように「五感」に対して強く訴求できる手段というのは、脳が「未来の不安に警戒している状態」から「いまこの瞬間」に戻すことができるので、先に紹介した「血管が広がる」という効果に加えて、二重の効果で不安を鎮めることができます。
補足として、お茶やコーヒーはカフェインが含まれているので注意です。カフェインの耐性は人によって大きく異なるので、カフェインの影響を強く受けてしまう自覚のある方は逆に心拍数が上がってしまうため、白湯を飲むことをお勧めします。
② 安心できるものを持っておく

エチケット袋を持っておいたり、ミンティアを持っておく等、それぞれの「これを持っておくと安心かも」というものを持っておくと、使う使わないに関わらずそれだけで効果があったりします。これは薬とか実用的なもの以外でも、例えばお守りやぬいぐるみなどでも大丈夫です。
「これがあれば大丈夫」は見かたによっては「依存」という言い方もできてしまいますが、依存対象が体に悪いものや準備が大変なものでないのであれば、ある程度なら頼ってしまっても構わないと思います。
私自身、8年ほど前から白湯入りの水筒を常に持ち歩いており、今ではそれが手放せない体になっています。しかし、白湯には相当飲みすぎない限り体に悪影響は無いし、デメリットは多少用意するのに手間がかかるぐらいなので、現状このことに特に問題だと思っていないです。
そういった意味で言うと、頓服の抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)に依存してしまうのは注意が必要と言われています。私も過去に医師から処方されたことがありますが、私には相性の良い薬だったようで、驚くほど簡単に不安が消えていきました。
しかし、特にベンゾジアゼピン系の薬は継続使用でどんどん体に耐性がついて効きづらくなっていったり、依存性もある薬なので、医師の指示に従いながらできるだけ使用頻度を減らすようにしました。現在は白湯で乗り切る形に落ち着いています。
もし主治医からお薬を処方されている方は、あくまでその主治医の方と相談しながら無理のない範囲で減薬をしていくのがいいと思います。
③ いざという時の逃げ場を確認しておく

1970年頃に行われた心理学の有名な実験で、
目の前のスイッチを押せば自分の意志でストレスを止められるAのネズミと
何をしてもストレスは止まらず、自分ではどうにもできないBのネズミに対して同じストレスを加えたところ、スイッチを押す押さないに関わらずAのネズミのほうがストレスが圧倒的に少なかったという結果があったみたいです。

人間も同じで、同じストレスが掛かっていたとしても、「いざというときに逃げられる場所」を把握しておくだけでストレスが軽減されます。
なので、いざ不安や緊張が爆発してどうしようもなくなったときにすぐに席を外せるように、お店に入ったタイミングでお手洗いの位置を把握しておくことが対策として有効です。「そんなに急にお手洗いに行ったら変に思われない?」と思われるかもしれませんが、実際に行くかどうかはともかく「場所を知っておく」ということに強い意味があったりします。それに、もし席を外すことになったとしても、少し驚かれることもあるかもしれませんが、大抵の人は食事相手が離席することに対してそこまで気にしていなかったりするものです。
また、吐き気がしてしまう場合はポケットにビニール袋を忍ばせておくのも効果があったりします。私も実際によくやっていました。
④ 最初の一口目を食べやすいものにする

人間の不安のピークというのは、多くの場合長くても20~30分しか続かず、そこからは徐々に落ち着いていくといわれています。
食事の場における不安のピークは、店に入った瞬間だったり席に座った瞬間だったりと人によって様々ですが、特に「一口目を食べる時がピーク」という方は多いです。 そのピークに合わせて食べやすいもの、具体的にはサラダやスープなどを食べることができれば、不安のピークが分散されて平常通り食事の場を過ごすことができる確率が上がります。 この方法は特に居酒屋など、お酒を飲む場で使えることが多いため、選択肢の一つとして覚えておくといいと思います。
⑤ 話題を用意しておく

少人数、特に一対一の食事において、「会話がなくなって黙る時間ができる」というのは多くの場合避けたいと思うはずです。 そもそも無言の時間を怖がらない、という心構えが根本対策として重要ではありますが、それは理想の話でしかなく、実際問題として話題がなくなるのは怖いですよね。
そのときのために、「無言になったときにはこの話をしよう」といういつでも袖から出せる話題を一つでも用意しておくという対策が考えられます。お互い黙ったときに、「どうしよう」となるよりも「じゃあこの話題を出そう」となるように準備しておいたほうが、いざそういう場面が来なかったとしても少し気持ちが楽になります。 出身地、共通の趣味など、相手のパーソナリティと照らし合わせて、自分がその後に話を広げられそうなものを一つ考えておくといいと思います。
⑥ 事前に軽く食べておく

私は超が付くほどの小食なのでこの方法は使えませんが、胃のキャパシティにある程度余裕がある方には事前に軽く食べておくという選択肢もあります。空腹MAXの状態で急に食事(特にパンや白米などの精製された炭水化物)を摂ると、血糖値が激しく増加し、それを元の値に戻すためにインスリンが大量に出て、血糖値がまた大きく下がります。 血糖値の乱高下は動悸や不安を引き起こすので、これを避けることによって落ち着いて食事をできる可能性が上がります。
また、別の視点として「ちゃんと食べなきゃもたない」と思うことによって逆にプレッシャーで食べられなくなりがちなので、そういった意味でも「事前に軽く食べておく」というのはありかもしれません。
⑦ 54321法
この方法はほかの記事・動画でも紹介していますが、「未来の不安に警戒している状態」から「現在に意識を戻す」ための手段になります。これを食事前に行うことで、うまくいけば不安が大きく解消されます。
やり方を簡単にご紹介すると、
- 視覚: 目に見えるものを5つ探す
- 触覚: 触れられるものを4つ感じる
- 聴覚: 聞こえる音を3つ意識する
- 嗅覚: 匂いを2つ嗅ぐ
- 味覚: 味を1つ感じる
というように、五感を順番に意識していきます。
この方法はあくまで一つの方法論でしかなく、「現在に意識を戻す」という目的が達成できるのであれば、例えば自分が安心する香水の香りを感じたり、ミンティアを口に入れるなど、それぞれにとって有効な手段を使っていただくのが良いと思います。
詳しくは以下の記事で解説しています。
失敗しても自分のことを責めない
今回は、「どうしても断れない、緊張する食事の前にできる準備」についてご紹介してきました。
「行きたくない食事には行かない」というのは非常に大切なマインドですが、世の中なかなかそうはいかないのが現実なので、まずは自分が「これならできそう」と思った対策について実践してみるのがいいと思います。
あと、一番大事なことは「もし失敗しても自分のことを責めないこと」です。ご飯を全部食べられるかどうかがその人の価値を決めるわけではないので、「食べられるか食べられないか」よりも「食事相手とどんな時間を過ごすか」のほうを大事にして過ごせれば良いと思います。
以上、参考になれば嬉しいです。



