下記は2025年12月3日にnoteに投稿した内容をそのまま掲載しています。
エッセイ風の文章になっているため、苦手な方はご注意ください。
目の前には、大量の手料理

主人公は、人前でご飯を食べるのが怖い会食恐怖症の女子中学生・葵
給食の時間が地獄で、毎日無理して食べては体調を崩すような子。
物語は、母親が怖い顔をして主人公の葵を見ているところから始まる。
「美味しくないの?」
母親が言う。
人によって身長の大きい小さいがあるように、胃の大きさや丈夫さは人によって違う。
なのに、これは案外知られていない。
美味しくないわけではないけどなぜか食べ物が喉を通っていかない経験って、普通に食べられるみんなは無いのだろうか。
地獄の給食

そんな葵は学校の給食が苦手で、配膳された料理を口を付ける前に食缶に戻すことでなんとか昼食の時間を過ごしていた。
しかしある日、葵の通っている学校でこんなイベントが始まった。
「めざせ完食月間」
地獄のイベント。
これによってクラス全体で「ご飯を残すのは良くない」という風潮が一瞬で出来上がり、葵はそのプレッシャーからとうとう給食の油淋鶏を一口食べた瞬間に吐き気を感じ保健室に駆け込む。
そんな葵が保健室で出会ったのが、クラス内で問題児扱いされている同級生の咲子。もう一人の主人公。
発言が妙に大人びている咲子は、葵にこう言う。
「たぶん君、会食恐怖症だわ。」
後に発覚するが、咲子は過食嘔吐という摂食障害を持つ。
二人とも「食べる」ことに大きな問題を抱えていて、保健室で一緒に過ごすうちに少しずつ心を開いていく。
そんな二人の主人公の視点を交互に映し、学校の給食改革をする様子や親、教師、友達との関係を描いて、「生きること」と「食べること」を紐解いていく物語。
以上が、天川栄人さん作「わたしは食べるのが下手」のあらすじです。
本当に感動しました。
印象に残ったセリフ(ネタバレ含みます)
印象に残ったセリフ①
「給食、食べたくないの。食べたくないのに、無理やり食べてる。だから気持ち悪い」
82ページ
葵が生まれて初めて母親に大声で歯向かい、自分が「食べられない」ことを伝えるシーン。
「母親が死ねって言ったら死ぬの?」
というセリフが作中にあったが、
子供の頃の私がそれを言われていたら、反抗していた と言える自信はない。
そんな直接的なことを言われるのはあり得ないにしても、
「あなたなんか産まなければよかった」とか。
もし感情的にそんなかんじのことを言われていたら、どうなっていただろう。
それぐらい、私は両親に歯向かうことができない子供だった。
食事も、受験勉強も、宗教も。嫌なことがいっぱいあったはずなのに。
印象に残ったセリフ②
あたし、自分ばかりダメなやつだって思ってた。
239ページ
でも本当は、みんなどこかが不完全で。
みんなどこかが不健康で。
みんな泣きながら、戦っているのだ。
終盤、咲子がママとインスタントラーメンを食べるシーン。
私もずっと、「自分はダメ人間だ」と思っていた。
でも、ちゃんと外側に目を向けると、みんな不完全なところはあるってわかる。
私が嫌だと思うことを「嫌がらせ」でしてきていたわけではなくて、
完全じゃないから歪みが生まれるのだ。
印象に残ったセリフ③
美味しいっていうのは、きっと。
231ページ
生きたいってことなんだ。
「美味しい」という味はなくて、
コーヒーなら苦い。
キムチなら辛い。
ケーキなら甘い。
梅干しなら酸っぱい。
でも、どれも「美味しい」を含んでいる。
「美味しい」って、なんなんだろうと、考えさせられるセリフだった。
「食べる」ことが持つ意味

「食べたくても食べられない」
「みんなと同じものが食べられない」
「食べることが怖い」
――私は今まで様々な会食恐怖症の当事者とお話をしてきて、色んな事情を持つ人と出会った。
その経験を持ったうえでこの小説を読んで、
「食べるってそもそもどういうことなんだっけ?」ということを深く考えさせられた。
食の悩みを抱えている人はもちろん、ちょっと生きづらさを感じている人にも響くと思うので、ぜひまだ読んでいない方にはおすすめしたい。
本当に諸手を上げておすすめできる本でした。
そして、この本を読み終わった今一番言いたいのはこれ
ごちそうさまでした。

